【レベル5①:18~40歳代前半】性成熟期

人生100年時代の活躍を見据えた健康への取組の開始時期でもある成熟期において、ライフコースアプローチ1)の視点で効果的な健康課題への取り組み方、生活習慣病・がん・女性特有疾患・ロコモティックシンドロームの予防法などを教育することが大切です。また18歳から39歳は、妊娠・出産期でもあり、女性の健康にとっての大きな節目であるため、ここでは妊娠前から男女で必要な健康の知識について学びます。

1)ライフコースアプローチ:病気やリスクの予防を、胎児期・幼少時から成熟期(生産期)、老年期までつなげて考えアプローチしようというヘルスケアの動きのこと(引用元:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ

1.プレコンセプションケアとは?

私たちは、プレコンセプションケアを「前思春期から生殖可能年齢にあるすべての人々の身体的、心理的および社会的な健康の保持および増進」と定義しました※1。現在から将来にわたる自らの健康のみならず、次世代の健康の保持及び増進を図り、国民全体の健康を向上することを目標としており、次世代までを視野に入れた国民的なヘルスプロモーションの一分野と考えます※1。 米国でも、プレコンセプションケアは当初、母子保健の向上を目的として米国の保健医療政策に組み入れられましたが、男女を問わず、子供を持つ意思があるか否かに関わらず、すべての人々の健康増進につながる概念とされています※2。国民全体の健康増進には、成育サイクル(図1)を含むあらゆるライフステージを網羅した保健医療施策が欠かせないことから、プレコンセプションケアの考え方を社会全体と共有していくことが必要です。

2.日本の現状と課題

日本の妊産婦死亡率は出産10万対3.3人、周産期死亡率は出産千対3.4人と※3世界で最も安全なレベルの周産期医療を提供している一方で、日本特有の多くの多くの問題を抱えているため、日本の実情にあった性成熟期世代に必要な健康支援、すなわち「プレコンセプションケア」が必要です。

3.教育・啓発・普及で期待されること

プレコンセプションケア教育・啓発・普及により、
・良好な妊産婦死亡率および周産期死亡率の維持と一層の低下
・計画外妊娠の予防
・妊娠分娩合併症・不妊症の予防
・流死産、早産、低出生体重の予防
・先天性疾患(神経管閉鎖障害・先天性風疹症候群等)の予防
等の様々な母子保健指標の改善が期待できるのみならず
・リプロダクティブヘルスケアの利用によるQOLや労働生産性の向上
・将来の生活習慣病の予防
・健康格差の是正
・健康寿命の延伸
等の国民全体の健康増進に直結することが期待されます。

文献
※1.令和元年度厚生労働科学研究費補助金(女性の健康の包括的支援政策研究事業)「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究」分担研究報告書「日本におけるプレコンセプションケアの定義案と目標案」
※2.Jonson K ら、 A Report of the CDC/ATSDR Preconception Care Work Group and the Select Panel on Preconception Care、2016
※3.厚生労働省 人口動態統計(2021年)

【レベル5①:18~40歳代前半】性成熟期(男女)の健康教育・支援教材

プレコンノート

<企画・発行> 
令和2年度厚生労働科学研究費補助金(健やか次世代育成総合研究事業「生涯を通じた健康の実現に向けた「人生最初の1000日」のための、妊娠前から出産後の女性に対する栄養・健康に関する知識の普及と行動変容のための研究(20DA0601)(研究代表者:荒田 尚子)「コンテンツ開発に関する研究」(代表者:荒田 尚子、研究協力者:三戸 麻子・本田 由佳・西岡 笑子)

性のグラデーション

<企画・発行> 
令和2年度厚生労働科学研究費補助金 (女性の健康の包括的支援政策研究事業)「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究(30070201)」(研究代表者:荒田 尚子)「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究」(研究分担者:井ノ口 美香子・西岡 笑子、研究協力者:佐々木 掌子、本田 由佳)

まるっと体操

まるっと!女性の健康体操

<企画・発行> 
令和2年度厚生労働科学研究費補助金(女性の健康の包括的支援政策研究事業)「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究(30070201)」(研究代表者:荒田 尚子)「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究」(研究協力者:体操企画・開発|本田 由佳・岡本 美佳・岩城 滉太、体操開発アドバイス|山下 愛、作曲|吉村 ゆかり)
著作権について
まるっとからだとこころの科学まなブックの著作権は「保健・医療・教育機関・産業等における女性の健康支援のための研究」(20FB1002)(厚生労働科学研究班荒田班)に属します。ただし、学校の授業や地域の健康教育など、非営利の目的で用いる場合には、著作者の許可を得ることなく利用可能です。
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